【インタビューVo.8】災害時に活躍する備蓄型トイレ「ほぼ紙トイレ」ー株式会社カワハラ技研

インタビュー

今回は、GLOBAL SUNDAY MARKET×Bo-sai2023にご出展いただきました、株式会社カワハラ技研にお邪魔し、企画開発部長の小野 奈々子さんにお話しを伺ってきました。

企業内外を問わず異なる分野の技術・技術者や仕組みを混合させて新しい価値を創造し、共に力を結集し、異なる技術やノウハウを融合させることにより、社会や環境に貢献する事業に取り組む同社の今一番の注目商品「ほぼ紙トイレ」について詳しくインタビューしてまいります!

創業のきっかけ

1987年(昭和62年)40年以上にわたる総合建設業の枠を超えて 他業種・他技術と融合を図り、事業構築することで 社会貢献度の高い事業の推進を目的に設立したのが「株式会社カワハラ技研」です。以後、総合事業企画会社として「衣・食・住・遊・医」あらゆるテーマの中で経験を積んで参りましたが、2011年の東日本大震災を機に、さらなる社会貢献を天命と定めて事業転換を図りました。 現在は、建設を軸として長年培ってきた知識や技術を活用して生み出した数々の発明の実用化のため、製品開発メーカーとして事業を展開しております。

ここ数年で起きている様々な自然災害。私たちは報道(映像)により現場の過酷な状況を知ることができます。 しかし、災害時に生じる数々の問題の中で取り上げられることが少なく周知されていないのが「トイレ問題」です。

そんな、災害時のトイレ問題を解決すべく、5年前に開発しました。

災害発生時のトイレ問題

文 成大

災害時のトイレ問題とは、具体的にどんなものがあるのでしょうか?

小野 奈々子氏

災害時には、2つの大きなトイレ問題が生じます。

1.水洗トイレは使えない

災害の種類や規模にもよりますが特に震災の場合は、断水や停電そして下水道や浄化槽の損壊により多くの水洗トイレが使えなくなります。無視して使用すれば、便器はあっという間に大小便で一杯となり衛生環境が悪化し感染症の温床となります。

2.仮設トイレはすぐに届かない

前述の平成28年の熊本地震の被災者へのアンケートで「仮設トイレが避難所に最初に設置されたのはいつですか?」との質問に対し、災害当日に届いたという回答は僅か7%でした。約90%に達したのは発災から8日後です。

災害による交通機関の障害や規制、特に道路の寸断は致命的で物資配送が不可能となるため設置に日数を要したのです。私たちは、「仮設トイレはすぐに配備されるものだ」と思いがちですが、アンケート結果から分かるようにトイレはすぐには届かないのです。

3.場所の問題

また、幸いに物資配送に影響がなかった場合でも、供給される仮設トイレは建設現場を主目的として開発されたものが多く、洋式が少ない、狭い、暗い、施錠が特殊など、子どもやお年寄りまで様々な人が使用する避難所トイレとしてふさわしくありません。被災者のことを考えた災害用トイレの整備が求められます。ラップポン等、ワンタッチ式のポータブルトイレも出てきていますが、屋内という場所の課題があります。

ほぼ紙トイレの使い方

文 成大

災害用トイレには、携帯トイレ、簡易トイレ、仮設トイレ、マンホールトイレ等、多種多様なものがありますが、ほぼ紙トイレはどのように活用すればいいでしょうか?

小野 奈々子氏

現存の災害用トイレの課題と、それらをカバーできる「ほぼ紙トイレ」の機能についてお話させていただきます。

災害用トイレの課題

①携帯トイレ・簡易トイレ
備蓄しておけば即使用できるという点がメリットです。便袋は可燃ゴミ扱いで処分できるものですが、災害時はゴミの回収作業に影響が出たり回収場所自体が被災する可能性もあります。保管状態によっては便袋の破損等により感染症の要因にもなりかねません。災害が長期化すると使用済みの便袋は膨大な量となりますので保管場所と処分の問題を想定し対応策を講じておく必要があります。

②仮設トイレ
仮設トイレには「完成型」と「組立型」があります。工事現場やイベント会場等で使用されている「完成型」が一般的ですが、重機無しでは簡単に動かすことが出来ませんし道路が寸断された場合は目的地に搬入したくても届けることができませんので備蓄には不向きです。災害用トイレとしては「組立型」の方が適していますが、組立に時間を要した、組立が大変で放置されていた、また保管期間中に素材が錆びてしまい必要時に使えなかったなど、被災者からは実用面での問題も指摘されています。

③マンホールトイレ
災害時でも普段のトイレにより近い環境を維持できる点がメリットですが、便器の囲い(テント等)を別途用意する必要があります。マンホールトイレ設置を検討する際に知っておきたいポイントとしては、下水道設備に被害が無いことが確認されて初めてマンホールの蓋の鍵を開けマンホールトイレを設置するので使用開始までに時間を要すること、使用が開始できても排泄物が溜まらないように水を流すので上下水道設備が破損した場合は別の水源の確保が必要となること、また私有地内の枝管に設置した場合、災害復旧後に清掃が必要となるためメンテナンス費用がかかることなどがあげられます。

便利で、簡単で、すぐ使えないと、実際の災害現場では機能しません。

そこで開発したのが、「ほぼ紙トイレ」です。

「ほぼ紙トイレ」の特徴

災害用トイレそれぞれの特長を理解し併用して備蓄しておくことができれば、災害規模、また発災後の時間の経過に応じて使い分けが可能となります。しかし何種類も備蓄しておくことは現実的に難しいかもしれません。

インフラ設備が全壊する規模の災害を想定した場合、発災直後からすぐ使用できるトイレは必需です。「ほぼ紙トイレ」は使用想定人数から必要数を算出して備蓄することにより、インフラが復旧する目安とされる期間を単体(他の災害用トイレとの併用の必要なく)で凌ぐことができます。

図:ほぼ紙トイレの特徴:

普及に向けての取り組み

より多くの自治体、企業、各種組合、地域の方にトイレ問題の実情を知って頂き、ほぼ紙トイレの必要性を伝えるべく、2ヶ月に一回講習会を行っています。また、防災関連のイベントにも積極的に参加させていただいております。

イベントの様子

講習会の様子:

GLOBAL SUNDAY MARKET×Bo-sai2023の様子:
横浜市危機管理監 高坂哲也氏が視察にされました。

最先端テクノロジーを未来へつなぐ

株式会社カワハラ技研では、独創的な製品を開発しています。

他にも社会や環境に貢献する製品をご紹介されていますので、ぜひホームページをご覧ください。

文 成大

本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございました。

小野 奈々子氏

ありがとうございました!

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