みなさんは、神奈川県内で地震や台風、大雨等による災害が発生した場合、県の要請に基づき県内に設置される避難場所に派遣されるキッチンカーのことをご存じでしょうか?
今回取材させていただいた、イベントフードプロ115合同会社は、2021年9月に神奈川県と災害時にキッチンカーを派遣する協定を結んでいる会社です。
協定を結ぶことになったきっかけや今後の活動について、代表の吉川敦志さんにお話を伺ってきました。
吉川さん、本日はよろしくお願いします!
まずは、神奈川県と協定を結ぶことになったきっかけを教えてください。
きっかけは、4年前の大きな台風で避難した人たちを見てからですね・・・!
神奈川県と協定を結ぶまで
2019年10月の台風19号で、大きな台風が来た時に、ダムが決壊するのではないかというくらい大変な騒ぎになりました。
私が住む厚木市や、周辺の愛川町、清川村では延べ6,700人が避難所へ身を寄せ市町村職員や消防団員らは不眠不休で対応にあたっていました。
特に厚木市では、避難所も47カ所となり、最大時2424世帯5,790人が避難所へ身を寄せていたそうです。市の職員は1,065人体制で対応。厚木市の被害は倒木や冠水などが主でしたが、愛川町や清川村では土砂崩れによる通行止めや、停電や断水もありました。
たくさんの人が避難しており、その人たちのために、お世話になっている神奈川県のために何ができるかと考えたのです。これから地震や災害が起きたときに、神奈川県のために何かできるのではないかと。
その後、たまたま他の仕事で神奈川県の方に会い、是非災害時にキッチンカーを派遣したいと話をしてみると、「ぜひ一緒にやりましょう」とお声をいただき、様々な調整を重ねて協定を結ぶこととなりました。
かながわ災害フードカーの皆さまには、9月に実施した「GLOBAL SUNDAY MARKET×Bo-sai2023」でも大活躍いただき、大変お世話になりました。
協定を結んでから、実際にどこか被災地に行ったことはあるのでしょうか?
依頼を受け、2022年に静岡で大きな台風があった際、停電と断水が続いている学生寮へキッチンカーで赴きました。暖かい食事ができていなかった皆さんに焼肉丼をふるまったところ、とても喜んでくれました!
写真:GLOBAL SUNDAY MARKET×Bo-sai2023の出店時の様子
変わりつつある日本の避難所のくらし
日本では、避難所の運営は、避難者が自ら運営するものとされています。災害によって被災した場合、住宅の再建など、その後の生活再建は自力で始めることが基本で、避難所での生活は、その生活再建の第一歩となる場所だと考えられています。
東日本大震災では、高齢者を中心に「生活不活発病」の疑いが見られたそうです。生活不活発病とは、全身の心身機能が低下し、筋力が弱くなったり疲れやすくなったり、頭の働きが鈍くなり認知症のような症状が現れるというもの。日常生活の中で頭と体を使い、充実した生活を送ることで予防できるため、避難所で役割を与えられて活発に過ごすことが役立つこともありますが、被災し、避難した直後は、ショックやストレス、混乱から、避難所の運営どころか普通に食事をとることもままならないことが多いと思います。
災害対策基本法では、物資調達について、まずは発災後3日までは備蓄で対応、そして発災後4〜7日は被災した地域の自治体などからの要請を待たずに必要と思われるものを国が判断して支援する「プッシュ型支援」、その後は被災地の自治体で取りまとめた要望に従って物資支援をするものとしています。こうした発災直後は備蓄食料に頼るといった要因や、栄養学的に飢餓にならないようにという考えなどから、避難所での食事はパンやおにぎりに偏りがちです。
しかし、日本の避難所での食事の考え方も、徐々に変わりつつあります。
2013年に内閣府が公表した「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取り組み指針」では、一定期間経過後の食事の質の確保として、「食糧の供給に当たり、管理栄養士の活動などにより、長期化に対応してメニューの多様化、適温食の提供、栄養バランスの確保、要配慮者(咀嚼機能低下者、疾病上の食事制限者、食物アレルギー患者(児)等)に対する配慮等、質の確保についても配慮すること」とされています。
このように、メニューの多様化や温かい食事(適温食)の確保への配慮も明記されています。ただし、被災した人が自ら生活を再開していくためにという観点は重視していて、被災地の地元業者が営業を再開するなど発災から一定の期間が経過した段階では、食料等の供給契約を順次地元事業者などに移行させることも示されています。
先進的な海外の避難所に学ぶ!地域に生かす避難所運営「食事」
https://moshimo-stock.jp/article/entry/2022/05/post-228/
なるほど・・・
避難生活における食事に関しての考え方も、変わりつつあるんですね・・・。
災害フードカーは、今後どのように運営していくのでしょうか?
今後の展望
JAPAN FOOD RESCUE(JFR)という名前で、活動内容は被災地に派遣するキッチンカーの取りまとめをはじめ、食による地域活性を目指す団体としてNPO法人の申請を行っています。
そして、どこの地域で災害が起きてもキッチンカーが駆け付けられるように、全国各地から賛同してくれる仲間を募集しているところです!
写真:吉川代表と徳田社員
吉川さん、本日はありがとうございました!
ありがとうございました!
進められているキッチンカーとの協定
イベントフードプロ115合同会社が2021年9月に神奈川県と協定を締結したことを皮切りに、キッチンカーと協定を結ぶ自治体が増えてきました。
東京都渋谷区では、うどんチェーン丸亀製麺などを展開する「トリドールホールディングス」との協定を、2021年12月に締結しました。災害時には区の要請を受けて、丸亀製麺のキッチンカーを避難所などに派遣してうどんを提供すると同時に、渋谷区内で営業する丸亀製麺の3店舗で被災した人たちにうどんの提供が行われます。
他にも、神奈川県では、逗子市と逗子キッチンカー連絡協議会が、藤沢市と藤沢市キッチンカー事業者連絡協議会などが協定締結をしています。
ボランティアにはルールがある
協定にも定められている通り、被災地に赴くにはルールがあります。
神奈川県とイベントフードプロ115合同会社の協定を見てみると
災害発生から飲食の提供までの流れは概ね次のとおりです。なお、キッチンカー派遣を行う災害の規模や避難所等については、その都度検討します。 (1)災害発生 (2)避難所等の開設 (3)県がイベントフードプロ115合同会社へキッチンカー派遣を依頼 (4)イベントフードプロ115合同会社がキッチンカーを手配 (5)避難所等においてキッチンカーが飲食を無償提供 |
とあります。
東日本大震災では、「何かしたい」という気持ちで被災地に多くの人が来てしまい、逆に被災地を圧迫し、復旧活動が遅れるといったこともありました。
善意の押し付けにならぬよう、「有事の際には被災地で支援活動をしたい」という気持ちがある方は、ボランティア団体に事前にエントリーしておきましょう。
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